扉の外

2007年3月20日 読書
ISBN:4840237174 文庫 土橋 真二郎 メディアワークス 2007/02 ¥557

電撃の金賞を受賞したやつで、二次通過が発表された頃から読みたい読みたいといい続けていた一本です。

著者の土橋真二郎氏は、なかなかの投稿職人暦を持っているようで、書き続けて実力を磨き晴れての受賞という感じですかね。

 
*感想

騙された。

いい意味と悪い意味で騙された。

まずはいい意味から。面白かったです。

もともと「受賞しないかもしれない、数ある応募作のうちのひとつ」だった頃から、これ読みたいこれ読みたいといい続けていたものなので、面白くなかったらそりゃがっくりするだろうw

もっとも、ここに至るまでには、

ようやく読める→だ、騙された!→騙されたが面白かった

という流れがあるのですが。
 

 
では悪い意味を。

人工知能関係ないやん……

この作品、原題は「もしも人工知能が世界を支配していた場合のシミュレーションケース1」※という、タイトルだけでごはんが四杯おかわりできそうな代物だったんですよ。

そりゃもうどれだけ人工知能な話なのかとワクテカワクテカしていたのですよ。

「扉の外」に改題されて発売と知ったときも、扉という単語が「夏への扉」を連想させて、これはアレか、乙女回路搭載のハイヤード・メイドガールがご主人様はにゃーんな話なのかと(ry

ぜんぜん違うし。

「扉の外」というタイトルに変わったことはいいと思います。原題のままだったら訴えてた。

 

内容は「CUBE系青春群像中二病風味」で、特にメスの強さをねばっこく描写しているあたりが非常に軍曹好みでした。

元々軍曹は「母系社会で強い女リーダーが、オスを扇動して閉鎖された社会を支配している」系の話が大好きなので、そう言う意味では当たりを引いた。
 

まあ人工知能を期待して買うもんじゃないと思うよ!
 

人工知能があまり関係してこないとわかった中盤から、ストーリーのSFな部分はどうでもよくなって、いかに主人公がダメ男かを楽しむものにかわっていくあたりが人を選ぶ。
この主人公、要するに岡目八目の観察者なんだけど、孤高の人なんてカッコイイものじゃなくて、本質的に「やる気のないドッヂボールのモトガイ(最初から外野)」なんですよ。

強いメスと対比して、こいつの戦う気のなさが軽い。いやもう実に軽薄。描写が硬派なだけに、冷静に見返すと「結局お前ヒモじゃん!」というギャップが一層アレ。

メスはメスで、タイプは違えど揃ってディクテーター。

そこがニターッと楽しめる人には面白いのだぜこの本は。欲を言えばもっとニタニタさせてほしかったです。え?5月に続編が出るって?

あ、べっとりと青臭いので、そもそもそういう属性にダメージ受ける人は手を出さないほうがいいというか手遅れだったらご愁傷様です。

タイトルで一目ぼれしただけあって、根っこの部分が軍曹の属性と引き合うような作品でした。最終的には「属性が合うか合わないか」だよねえ。

もっとヌチャッと生臭くてもよかったかな。母親の描写が白眉。

 

 
※原題から連想される直球のストーリーだったら、マトリックスのパクリになってたと思うが。

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