断章のグリム〈1〉灰かぶり (電撃文庫)
2009年2月21日 読書
*レビュー練習その3だか4だか
電撃で一番楽しみにしているシリーズ。このシリーズ感想を書くのは初めてだったかな?
イラストを担当しているのは(openCanvasコミュニティサイトがportalgraphics.comという名前だった時代のユーザーにはおなじみの)三日月かけるさん。
あらすじ(公式サイトより)
高校生の白野蒼衣は、普通が一番と考える温和な少年。
ある日、ゴスロリ姿の美少女・時槻雪乃と出会い、人間の狂気が生み出した “灰かぶり(シンデレラ)の悪夢” の存在を知る。
彼女曰く、この世界に存在する怪現象は、すべて<神の悪夢>の欠片だというが……。
このシリーズは導入が分析心理学なのですが、そこから「神の悪夢」を「グリム童話」へ持って行くのが面白いです。
神話・伝説とは、集合的無意識の表出である。あるES患者が見たと言う「太陽から棒が延びて空気をかき回し風が起こる」現象と、よく似た伝承がローマ帝国で一時期信仰されたミトラ神話に残されていた。この患者にミトラ神話の知識は無い。この奇妙な符号は、ミトラ神話も患者が見た光景も、集合的無意識より出でたものだからである。
集合的無意識とは何か。それは神の見る夢である。人の無意識と神話・伝承は、神の夢を通して繋がっている。夢には良い夢も悪夢もある。神の悪夢ともなれば、それはただの夢に留まらず、悲劇として現実に表出してしまう。
現実にあふれ出た悪夢の泡は、神話・伝承のかたちをとって現れる。神の悪夢の破片は、まるで伝承を母体にした物語「グリム童話」をなぞるかのように悲劇を広げていく。
主人公の白野蒼衣(しらのあおい)は、あふれ出してしまった神の悪夢によって起る被害を、最小限に食い止めようと活動する団体、ロッジに所属しています。
次の被害者が出る前に、物語を読み解き、誰が悪夢の中心なのかを探し出すことができるのか。悪夢の恐ろしさと、悪夢に触れてしまった人間の悲劇。次の惨劇が起ってしまうのか、蒼衣たちの推理が間に合うのか、時間との戦いが見所です。
この、「最小限に食い止めよう」というところも、読んでいくうちに絶望感で追い詰められる神の悪夢の無慈悲さをよく現しています。神の悪夢は、根底から解決したり、完全に抑止できるものではないのです。
なんとか悪夢を沈静化できても、被害者たちの心には「断章」と言う形で悪夢の傷跡が残ってしまいます。断章はいつ悪性化するとも分からない腫瘍のようなもので、新たな悪夢として活性化してしまう危険性を秘めています。
大きな悲劇が終わっても、残された人々は爆弾を抱えながら暮らしていかなくてはなりません。ロッジとは、断章を持った人々の自助組織ですが、その根底には次なる惨劇の元となりかねない断章の監視があります。
事件の真相をといていく推理パートが、民俗学や神話を絡めていてこれまた面白いです。特に3巻4巻の「断章のグリム -人魚姫-」における、人魚姫と八尾比丘尼の比較は、民俗学色が濃いエピソードです。
そのうちオルフェウスとイザナギをやったりしないか楽しみです。
*ちょっとだけグロい
スプーン一杯のグロテスク。ドロドロした描写が多いです。各巻に必ず含まれています。
ヒロインでありもう一人の主人公である時槻雪乃(ときつきゆきの)からして、断章の能力が「肉体的苦痛を炎に変える」というものなので、毎回悪夢を焼くたびに自分の体を傷つけるという。
グロテスク表現が苦手な方は、留意しておいたほうが良いかもしれません。
電撃で一番楽しみにしているシリーズ。このシリーズ感想を書くのは初めてだったかな?
イラストを担当しているのは(openCanvasコミュニティサイトがportalgraphics.comという名前だった時代のユーザーにはおなじみの)三日月かけるさん。
あらすじ(公式サイトより)
高校生の白野蒼衣は、普通が一番と考える温和な少年。
ある日、ゴスロリ姿の美少女・時槻雪乃と出会い、人間の狂気が生み出した “灰かぶり(シンデレラ)の悪夢” の存在を知る。
彼女曰く、この世界に存在する怪現象は、すべて<神の悪夢>の欠片だというが……。
このシリーズは導入が分析心理学なのですが、そこから「神の悪夢」を「グリム童話」へ持って行くのが面白いです。
神話・伝説とは、集合的無意識の表出である。あるES患者が見たと言う「太陽から棒が延びて空気をかき回し風が起こる」現象と、よく似た伝承がローマ帝国で一時期信仰されたミトラ神話に残されていた。この患者にミトラ神話の知識は無い。この奇妙な符号は、ミトラ神話も患者が見た光景も、集合的無意識より出でたものだからである。
集合的無意識とは何か。それは神の見る夢である。人の無意識と神話・伝承は、神の夢を通して繋がっている。夢には良い夢も悪夢もある。神の悪夢ともなれば、それはただの夢に留まらず、悲劇として現実に表出してしまう。
現実にあふれ出た悪夢の泡は、神話・伝承のかたちをとって現れる。神の悪夢の破片は、まるで伝承を母体にした物語「グリム童話」をなぞるかのように悲劇を広げていく。
主人公の白野蒼衣(しらのあおい)は、あふれ出してしまった神の悪夢によって起る被害を、最小限に食い止めようと活動する団体、ロッジに所属しています。
次の被害者が出る前に、物語を読み解き、誰が悪夢の中心なのかを探し出すことができるのか。悪夢の恐ろしさと、悪夢に触れてしまった人間の悲劇。次の惨劇が起ってしまうのか、蒼衣たちの推理が間に合うのか、時間との戦いが見所です。
この、「最小限に食い止めよう」というところも、読んでいくうちに絶望感で追い詰められる神の悪夢の無慈悲さをよく現しています。神の悪夢は、根底から解決したり、完全に抑止できるものではないのです。
なんとか悪夢を沈静化できても、被害者たちの心には「断章」と言う形で悪夢の傷跡が残ってしまいます。断章はいつ悪性化するとも分からない腫瘍のようなもので、新たな悪夢として活性化してしまう危険性を秘めています。
大きな悲劇が終わっても、残された人々は爆弾を抱えながら暮らしていかなくてはなりません。ロッジとは、断章を持った人々の自助組織ですが、その根底には次なる惨劇の元となりかねない断章の監視があります。
事件の真相をといていく推理パートが、民俗学や神話を絡めていてこれまた面白いです。特に3巻4巻の「断章のグリム -人魚姫-」における、人魚姫と八尾比丘尼の比較は、民俗学色が濃いエピソードです。
そのうちオルフェウスとイザナギをやったりしないか楽しみです。
*ちょっとだけグロい
スプーン一杯のグロテスク。ドロドロした描写が多いです。各巻に必ず含まれています。
ヒロインでありもう一人の主人公である時槻雪乃(ときつきゆきの)からして、断章の能力が「肉体的苦痛を炎に変える」というものなので、毎回悪夢を焼くたびに自分の体を傷つけるという。
グロテスク表現が苦手な方は、留意しておいたほうが良いかもしれません。
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